この可愛らしくてどことなくミステリアスなジャケットのLPを僕が見つけたのは、東池袋の明治通り沿いにある小さなレコードショップだった。新文芸坐やミカド劇場や、そのほか種々雑多な店が軒を連ねるあの怪しげなエリアだ。
0 コメント
ソニー・ロリンズのサックスには、力を込めてしゃくるような箇所がひとつもない。まるでありものの具材を中華鍋に放り込んで一振りしただけで見たことのないご馳走を作ってしまう、恐ろしく手際のいい料理人のような男だ。 長い時間をかけて洗練されたクラシック音楽を聴くのはたしかに心癒されるけれど、かつてそこにあったはずの歪な面白みや息をのむほどの鮮やかさにもう手が届かないことを思って、時折どうしようもなくもどかしくなる。 20世紀のはじめ、ニューオリンズのうらぶれた安酒場である音楽が人々をにぎわせていた。 その余興音楽は安酒場からダンスホールへ、ダンスホールからコンサート会場へと演奏の場を移し、いつしか"ジャズ"という名前で世界中の人々に親しまれるようになった。 |
カテゴリ
すべて
アーカイブ
10月 2023
著者Yuya MASUDA |